介護体験記②

その後、5カ月ほど入院。

退院の時期にあわせて、介護保険サービスの組み合わせのため、

カンファレンスが開かれる。ドクターやケアマネ、介護事業者や訪問看護のスタッフが勢ぞろいする。

その時にカンファレンスのための、母のアンケートを目にした。

「いつまでも家で暮らしていたい」

うちの母の中年期以降は困窮した苦しい生活だった。

一年中、朝から夜遅くまで働いていた。

「~がしたい」という願望は何十年も聞いたことがなかった。

もらったものを返したいという想いとこの人は報われるべきだという想いで

私は母の働く場と居場所を守ることにした。

母を家に連れて帰った。

介護は過酷だった。頑張った先にある到達点は母の死である。

それでも介護保険、医療保険と難病の特定疾患の制度に助けてもらえた。

自費でリハビリの先生に公私共にお世話になった。

母を通しての縁となるが、この先生とは今でも友人づきあいが続いている。

大きな病院の婦長さんとも近しい仲になった。

立つことも歩くことも食べることもできなくなった母の最期のリハビリを

根回ししてくれた。おかげで死を前に家に連れて帰ることができた。

家で体重が20キロ程度となった母を自分自身で風呂に入れていたが、

その容態にもかかわらず、とても幸せそうな顔をしていた。

自分が知っている中では、こんな幸せそうにしていることは見たことがなかった。

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